水丸さんが愛した鳥取への旅③ー番外編(有定堂書店) [アート]
鳥取では少しゆったりしたスケジュールで過ごそうと決めていました。
気持のいいカフェで美味しいコーヒーなんか楽しんだりなんて思っていました。
旅の最終日はそんな1日にしようと思っていましたのに・・・。
あの台風21号のおかげで朝からもう名古屋に帰れない事は決定し、朝からまずはその対応策を。
鳥取は中国山地のおかげで台風の影響は毎回少ないとの事、雨こそ降って来たもののそれほどのことはありませんでした。ただ雨の中そんなにあても無く歩き回る事もできず。
初日に少し街歩きをし、この街がそれほどの規模でない事はわかっていました。
雨ではあるので何度も行った事のある鳥取砂丘に行くのも気が進まず。
結局初日にこれはと思った「有定堂書店」へ。
鳥取を悪く言うわけではないのですが、正直なところかなり活気があるとはとても言いがたい。
この書店もご多分に漏れず、外見は街の古びた書店。昭和の頃にはきっと流行っていたんだろうなという風貌。
ところが中に入ると、これがとても面白い。
「カフェで読みたくなる本」(タイトルは若干間違っているかもしれません)だとか「猫好きへ」とか同じ本でも合うコーナーであればいろいろに置いてある。
思想書、経済書、政治書、美術書、小説・・・漫画も。
Casaのバックナンバーなんかが揃っていたり・・・。
鳥取を紹介する本も揃っていました。この本屋さん鳥取が大好きなんだなと思いましたよ。
もちろん水丸さんの「鳥取が好き。」は随所に置いてありました。
いろんなジャンルがあるにもかかわらずかなり偏った選書。
多岐にわたるジャンルではあるが、その内容は個人的な好みを感じる。
私設図書館的な匂いがする。
作家は言うまでもなく同じ装幀家のものと思われる本が随所に置かれていたりする。
美しい本が多かったのも印象的だったな。
以前おとずれた京都の恵文社一乗寺店が知っている書店では一番近い雰囲気だろうか。
書棚を片っ端から引っ掻き回したくなる衝動を押さえる。だってここは街の本屋さん。ここでお商売をしていらっしゃる。一介の旅の者はここでたくさんの買い物をするわけも無く、失礼は慎まなければ。
それでもここに立ち寄った証に何か1冊と思い、この旅に最も相応しい「民藝の歴史」を求めた。
鳥取に住んでいたら、あるいは名古屋にあったら必ず入り浸る事間違い無しの書店だった。
名古屋に帰って調べてみたら、書店業界では伝説的なお店としてつとに有名なのだと言う事がわかった。
店番は2回訪れたけれどいずれも年配の女性がしていらっしゃった。
本の選定は誰がやっているのか。もしかの方ならどんな思いでチョイスしているのかなど聞いてみたかったが、なんだかそれも失礼な気がして。「買った本に書店のゴム印などあったら押してほしい」と頼んでみたけれど、「それは無いのでショップカードを持っていってください。」と。やはり多くを聞くきっかけが無いまま書店を後にした。