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安西水丸さんが愛した鳥取への旅①ー吉田璋也と民芸 [アート]

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左から 鳥取民藝美術館・たくみ工芸店・たくみ割烹

安西水丸さんが亡くなられてもう4年がたってしまった。
まるでまだお元気で「ご挨拶代わりだよ」と言わんばかりに「鳥取が好きだ。」が届いたのは夏の初めだっただろうか。その日から早く鳥取に行きたいと焦がれ、とうとう先日行ってしまった。

「鳥取が好きだ。」をずっと身近において眺めていたのでこの旅は吉田璋也を巡る旅になりそうな事も予想はついていた。

吉田璋也
その人はもう100年以上も前に生まれた人で、柳宗悦の民藝運動に共感し鳥取の民藝の父的存在だ。
鳥取の窯元、特に因州焼中井窯のプロデュースを始め焼き物・木工・織物など鳥取の民芸品にまで幅広く手を入れた人です。ただデザインだけに手を入れたのではなく売る場、使う場のプロデュースまで、つまり最後の部分までちゃんとシステムを作ったのだ。

上の写真の建物3軒。
真ん中の「たくみ工芸店」では作った「物」を売る場を作った。
この店は大成功してほどなく東京銀座に「銀座たくみ」を開いたほど。
水丸さんはここで始めに鳥取民藝に出会ったのだとか。
しかし、売るだけでは物は広がっていかない。デザインは使ってみなければ本当のよさは理解できないのだから。ということで「たくみ割烹」を作り、「物」を「使う」を実践することになる。これが一番右の建物。
一番左が「鳥取民藝美術館」
東京駒場が「日本民藝協会」の大本山みたいなもので柳宗悦の民藝運動がもとになっている。
もちろん「鳥取民藝美術館」もその所属になる。
愛知にも豊田に素晴らしい「民芸館」があるのでそちらも行ってみてほしいと思います。
「鳥取民藝美術館」は今までいくつも見た民藝館の中ではかなり「箱」としては小さい。
一階が吉田がプロデュースした民藝品。
二階が彼が世界中から集めた民藝品。
3つの施設は私たちのような旅行者のための物ではなく、鳥取の人たちのためのもの。
だから、売っている物も展示している物も使っている物も鳥取の物だけで構成されているのではなく日本中の民藝品がある。

「鳥取民藝美術館」ではどれも撮影OKでしたが、これは書籍などもたくさん出版されているのでご興味のある方は調べてください。できればお出かけください。

「たくみ工芸店」は現在も営業中なので店内の撮影は遠慮いたしました。

「たくみ割烹」
これは実際に使える美術館というコンセプトで吉田が作った飲食店。
このコンセプトにプリズムはいたく共感するのです。展覧会ではありますが、「使える」をコンセプトにした「森正洋展」を今でも誇りに思っているからです。
実はブログを始めSNSで食べ物を投稿するのは最小限にするのが私のモットーなのですが、今回は店のコンセプトを考えると出すべきかと思い以下特例で書きます。

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水丸さんが愛した鳥取で必ず食べたと言うカレー
カレー皿(延興寺焼)小鉢(砥部焼?)グラス(沖縄ガラス)
箸袋は吉田が中井窯をプロデュースした基本的な染め分けがモチーフになっている。
ちなみに、このデザインの器を1枚待って前廊としましたが人気が高く1枚も買える物はありませんでした。

カレーは一階の椅子席(どの家具も鳥取木工)で鳥取駅から直行していただきましたが、やっぱり2階のお部屋でもと思い別日に再度予約しました。

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照明器具も吉田のプロヂュース。

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襖の引き手も吉田がプロデュースした鳥取木工

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この座卓も吉田プロデュースだと思われる。

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大きな花入れはオブジェとして。(どこの焼き物かは聞きそびれましたが、小鹿田焼と思われる)

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奥(小鹿田焼)手前(牛の戸焼)

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(山根窯)

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(宮内窯・島根)

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「すすぎ鍋」
これは「しゃぶしゃぶ」の元祖なんだそうです。何処かの国の食べ方を参考に吉田は料理までプロデュースしたということになります。もちろん鍋のデザインも。

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これが吉田プロデュースの始め。最大のヒットデザイン中井窯
片口だけではなく皿、マグ、鉢・・・どんな食器もあるのではないだろうか。

最後は仁風閣
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明治建築の宝。
鳥取城主婦人のために建てられた物ですが、これは吉田が設計したのではありません。
この建物の保存に尽力をしたということです。

イラストレーターであった安西水丸さんが吉田璋也の存在をリスペクトしていたのは明白だが、水丸さんが好きだった鳥取民藝にはことごとく吉田璋也の影が付きまとっていたというのが本当のところなのじゃないだろうか。



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