涙壷ー花井正子展 [アート]
涙壷とは、死者を哀しみ流した涙をためて霊を慰めたとされています。
哀しみは遠い昔に生きた人も今を生きる人も変わらない。
花井正子さんはそんな思いを込めてこの作品を描きました。
花井さんの個人的なことですが、ずっと心の整理がついていなかったことがこの絵を描いたことで解消されたと言います。そういうことも含めてこの作品は今回の個展の集大成となったのではないかと思います。
この涙壷もローマングラスです。
哀しみも希有な菌が付けば芳醇な甘くて美味しい時間になる。
貴腐ー花井正子展 [アート]
花井正子さんはモランディの絵が好きだと言います。
モランディは瓶をモチーフにした絵を描く画家として有名です。
モランディ展を観に行ってそこで手に入れた画集の中に彼のアトリエの写真があった。アトリエには当然モデルとした瓶があり、その中にローマングラスも含まれていたことを知って驚いたそうです。花井さんもずっとローマングラスに心奪われていたから。
時間を経て偶然そこにある、瓶。
何千年のときを経るという希有さ。
貴腐ワイン。
葡萄が実り熟してもそのまま収穫しないでいると干し葡萄になる。そこにある菌が付くと甘みが増します。それで作ったワインが貴腐ワイン。甘い甘いワイン。
「貴腐」特別な菌が付かないとできない。腐って毒になるのではなく、腐ってえも言われぬ芳醇な甘さになる。
ローマングラスって貴腐ワインのような甘さがあるのかもしれないな。
desperateー花井正子展 [アート]
しじまー花井正子展 [アート]
ローマングラスの時間ー花井正子展 [アート]
絵に込めた思いー花井正子展 [アート]
人物、風景、花、木、壷、瓶・・・。
花井正子さんが今まで描いて来たものは多岐にわたる。
今回の個展でもいろんなモチーフが溢れている。
風景も静物もあり、戸惑いを隠せない人もいるようです。
ただこの場に慣れてくると違和感無く見えてくる。
残念ながら、最後まで慣れることなく帰っていかれる方もいらっしゃるのですが・・・。
違和感無く受け入れられるのはなぜだろうか。
花井正子という人物はとってもまっすぐな人で、ある意味不器用な人。
愚直なほど思い詰めたことに突き進むタイプです。
だから何を描いていても底に流れるものまで変えることはないのです。変えられないと言ってもいいかもしれません。
大きなテーマが変わらないことが「違和感無く」ということになっているのだと思います。
林檎に込めた思いー花井正子展 [アート]
林檎の絵。花井正子さんが林檎を描き始めたのは随分前のこと。
林檎。
かわいい。
綺麗。
美味しそう。
観る側がその絵からのメッセージをどうを受け取るかは自由。
どの受け取り方にも誤りはない。
絵というのは作家が描き終えた時点から一人歩きをする。作家の思いを正確に受け取る必要はない。
ここから先は余談になる。
花井さんが林檎を描き始めた頃と今とではちょっと違うものがあると言う。
子供の頃自分にとって林檎がどんな存在だったのかふと思い出した時から、林檎は彼女にとって哀しくも温かい存在になった。が、できれば温かいだけの存在になってほしかった。そのためには、そうなるまで描くしかないのだった。
作家の極プライベートな描く理由に振り回される必要は、当たり前だけど、ない。
絵が変わった!?ー花井正子展 [アート]
ギャラリーに入るなり開口一番「絵が変わった?」という方の多いこと多いこと。
確かにね。
瓶なんて描かなかったものね、花井正子さんは。
何方かと言えば、というよりほとんどの方は「花井さんの絵は風景画だ」と言われていました、今までは。
それが「瓶」ですから「静物画に変わったのね」という意味の「変わった?」なんです。
変わった、モチーフが変わった。風景じゃなくて「瓶」
何で?
誰だってそれは気になる、ちょっとした衝撃。
それなのに花井さんは「テーマ(言葉?)なんてどうだっていい。自分の中で描く意味はずっと変わっていないのだから」と言い切る。これはなかなか観る側にとって挑発的な言葉。
じゃ、10日間で少しでもその心に迫ろうじゃないか。
どこが何も変わっていないのか。
そして敢えて言うけど、どこが変わったのか。
花井正子ー時間の虚(キョ)・・・ローマングラスからー初日 [アート]
花井正子さんがアーティスト宣言をしてからもう7、8年はたつだろうか。
自分の魂に忠実に絵を描く。
それは壮絶な時間を過ごすということを意味する。
画材はパステル。
ではパステル画なのか?確かにパステルを使っているのだからそう言えないわけではない。
ただ、その言葉でイメージする甘く柔らかな世界は彼女の絵にはない。
そこにあるものは魂の叫びであり、それに向き合った画家の激しく静かな虚(キョ)。それは孤独。
生きていれば誰もが避けられない孤独だからこそ多くの人が彼女の絵に共感し、時には涙する。
描かずにはいられなかった魂の叫びを受け取ってほしい。
明日4月6日(金)午後6時よりギャラリートークを開催しますが花井さんは来週の水曜日11日以外は在廊いたしますので、是非作家の生の言葉も聞きに来てください。