エンゼルトランペットー加藤鉦次絵画展 [アート]
加藤鉦次さんが花を通してその周りの空気感を描いていると再三紹介してきましたが、そこに花の存在感がないというわけではありません。
エンゼルトランペットは近頃ではよく目にする花ですが、決して古来から日本にある花ではありません。調べてみてもいつ頃からこんなに一般的になったのかはわかりませんでしたが、熱帯の高地が原産のようです。これほどまでに日本に根付いたということは植物としての繁殖力があるということなのかと思います。つまり生きる力が強いということ。それが加藤さんの絵に影響しない訳はありません。
温室や農地に繁茂するこの花は豊かな自然の力をたっぷり吸収して生命力を見せてくれます。
異国の地で力強く生きる花のたくましさもこの絵の魅力だと思うのです。
カンナー加藤鉦次絵画展 [アート]
ケシー加藤鉦次絵画展 [アート]
黄花コスモスー加藤鉦次絵画展 [アート]
加藤鉦次さんは油絵の具とテンペラ絵の具を使って絵を描いています。混合技法と言います。
アーティストはいろいろな理由があってその画材に行きつくことが多い。
そもそも立体なのか平面なのか。それだって偶々どちらかに出会ってしまったということもありますが、相性ということは大事な理由です。
油絵の具もそれを選ぶ人選ばない人がいます。
油はご存知のように乾きにくい。それが待っていられない人。逆に乾く時間が考える時間になると言う人。匂いが苦手という人もいます。
加藤さんは乾く時間が大切な作家のようです。
今回の32点の作品、ほとんど同時進行なのだそうです。どの作品にも少しずつ手を入れて完成させていったと言います。
朝アトリエに入るとそれぞれの絵が「今日はこうしてね。ああしてね。」と語りかけてくるのだそうです。どの絵からも声がかかるので毎朝手を入れることがどっさりだそうです。
毎日の生活の中で作家だって人ですからいろいろな感情の中にいます。朝の散歩でもうじき咲きそうな花があれば、数日後には枯れてしまっている。絵は正直だと言われます。そんな些細な心の動きも持ったまま筆を入れていけば心の揺らめきさえ絵には現れます。それが加藤さんの絵の魅力なのかもしれません。
毎日ギャラリーでご自分の絵に対していると絵はこうしてほしいああしてほしいと作家に語りかけるのだろうか。
「ひとたび飾ってしまうと僕も鑑賞者になる。こんなふうに見えるんだとかこう描いていたのかとか、第三者になっている。」のでもう語りかけてこないのだそうです。
明日この絵はどう見えるのかも楽しみな展覧会です。
アマリリスー加藤鉦次絵画展 [アート]
今回の加藤鉦次さんの個展では花が真ん中に描かれている構図がとても多い。
それで「今回は花がテーマなんですね」とみなさんおっしゃいます。
それはとても素直な観方です。
それでもその花を一生懸命追おうとすると、なんだかちゃんと見えない。
せっかく花を描いているのならもっとはっきり描けばいいのにとさえ思ってしまう。
一方「花を描かれたのですね」と言われた加藤さんは「なんだか気恥ずかしい」と。
「花を描いているようでその向こうの何か。空気だったり風だったりを描いているんです。だから花を描いていない訳ではないけれど、花かと言われると不思議な気持になるんです。」と。
元々散歩の途中の花が美しいと思って描き始めたのに、その向こうの何かに夢中になってしまっているのだそうです。
そう思って過去を振り返ってみると「祭」や「からくり人形」を描いている時でもその向こうを描いていたことに気がつくと言います。
時間や空気の流れや揺らぎ。
それがゆっくりと見る側に近づいてくるように思う。